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研究開発課題2


女性がリプロダクションと個人のQOL向上を両立するための総合デザイン
研究開発課題リーダー:杉浦真弓(名古屋市立大学 医学研究科 教授 不育症研究センター長) 
参画機関:名古屋市立大学 京都大学(株)スギ薬局
 
1. 認知行動療法アプリ開発研究
流死産を繰り返す不育症患者に対する認知行動療法Cognitive Behavioral Therapy(CBT)アプリ「モナリザ」を京都大学と共同開発し、抑うつ改善、出産率改善を目標としてランダム化比較試験(RCT)を実施している。古川壽亮(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康増進・行動学分野教授)はCBTの世界的に著名な研究者であり、うつ病、大学生「レジトレ!」、乳がん患者に対するうつに効果的なアプリ開発に成功している。モナリザには、セルフモニタリング、認知再構成、行動活性化、アサーション、構造化問題解決の5つのCBTスキルを挿入し、スキルごとの主効果と交互作用を推定するため、完全要因ランダム化試験を行う。介入要素とその交互作用の効果サイズ0.2を、alpha=0.05, beta=0.10で検出するのに352人が必要と計算した。
不育症は5%の高頻度であり、患者の約15%に臨床的に問題となる抑うつ・不安障害が認められる(Sugiura-Ogasawara et al. J Obstet Gynecol 2013)。また、抑うつ状態によりさらに流産しやすいこともわかっている(Sugiura-Ogasawara et al. Hum Reprod 2002)。患者の最大の望みは、生児をその腕に抱くことである。不育症患者は累積的に85%が出産可能なことがわかっている(Sugiura-Ogasawara M et al. Fertil Steril 2010)。抑うつ患者はショックのため避妊することも多いが、抑うつが改善して次回の妊娠に向き合うことができれば出産率改善は可能と予測する(図)。
育成型期間終了時にRCTを終了する。本格型期間では、研究成果を得て、「モナリザ」を改良し、商品化(実用化)を目指す。
2021年の出生数は81万1622であり、減少の一途をたどっている。妊婦死亡は年間30人であるが、産褥うつはこの中に含まれていない。東京都のデータでは出血死よりも産褥うつ自殺が出血死を上回っているという。妊婦CBTアプリ開発は行われているが、効果が示されているものは限られている。
育成型期間に、認知再構成、行動活性化、構造化問題解決3スキルとAI recommendationを挿入したアプリを作成する。導入部分は助産師と協力して、妊婦指導要素を挿入して、妊娠・産褥うつ対応アプリ開発を行う。名古屋市立大学病院800分娩を対象としたパイロット試験を行う。本格型期間に有効性を証明する臨床試験を名古屋市立大学と関連病院(年間分娩総数5000)を対象として実施する。本格型終了時に妊娠・産褥女性のうつ病、不安障害の減少、自殺の減少を目標とする。


2. 産後ケア開発研究
名古屋プリンスホテルとスギ薬局の支援により、産後デイケア事業を計画している(愛知県助産師会を通して助産師派遣の公募を実施)。育成型終了時に月平均20人の女性を受け入れ、利用者の抑うつ、不安障害の改善を目標とする。本格型期間では市民病院内に産後ケア施設を検討する。離職中の助産師、心理士を育成し、心理社会因子の研究も行う。
3. 妊娠・流産・出産を機とした離職とその経済的損失調査研究
仕事や精神的ストレスが流産を起こすというエビデンスは無く、誤認が存在することが示唆された(Bannoら、J Hum Genet 2019)。不育症患者と健常妊婦1539人を対象として、流産の原因に対する誤認、離職する頻度などの調査を基に、育成期間に妊娠、流産、出産、育児を理由とした離職の頻度と離職の危険因子を明らかにする。離職の原因を解析し、離職とその経済的損失を計算し、成果の啓発を行う。