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第6回拠点コンソーシアムセミナー


講師:中山 祥嗣 先生(国立環境研究所 次長、名古屋市立大学 客員教授)
講演内容
タイトル:
バイオモニタリング:これまでとこれから
要旨:
Human biomonitoring(HBM)は、特定の集団がどのような化学物質にどれだけ曝露しているかを長期的に観察・評価する手法の一つである。国民を代表する値として、体内の化学物質量を経時的にモニタリングすることは、行政施策決定やその事後評価のみならず、国民に広く現状を伝え自ら曝露・非曝露を選択する機会を与えるためにも重要である。世界では、主要先進国でHBMが実施されており、化学物質のリスク評価・リスク管理に用いられるとともに、国民の知る権利の一環としてその(集計)結果が国民に提供されている。さらに、米国におけるHBMなど、誰にでも利用できる様式でデータが提供されている事業も存在する。
主なHBM事業としては、米国CDCが実施する国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey; NHANES)、ドイツ環境庁のGerman Environmental Specimen Bank(ESB)とGerman Environmental Survey(GerES)、カナダ保健省のカナダ健康調査(Canada Health Measures Survey; CHMS)、韓国環境部の韓国環境保健調査(Korean National Environmental Health Survey; KoNEHS)などがある。また、EU全体でHBMを推進しようという取り組みが、2017年から続いている。これらはいずれも、国民を代表する調査として実施されており、重要な行政・社会貢献事業として位置づけられている。

これらのHBM事業の中には、その結果を随時報告するとともに、結果を解釈するための指針値や指標値を公表している調査もある。例えば、ドイツ環境庁はHBM委員会を設置し、HBM指針値の決定・公表を行っている。カナダ保健省もHBM指針値に当たるHBM等量値(biomonitoring equivalence; BE)を公表している。これらの値は、それぞれの機関で異なっていることも多く、2018年には、筆者とカナダ保健省のSt-Amand博士らが中心となり、国際曝露科学会(International Society of Exposure Science; ISES)のもとに、国際HBM指標値作業部会(International Human Biomonitoring Guidance Values Working Group; i-HBM)を設立し、研究者・専門家集団による国際的に統一した指標値の設定を目指している。
本講演では、HBMによって何がわかり、どのように活用されるかについて、国内外の例をあげて解説するとともに、HBMの今後の展開についても紹介された。